親の土地で子が駐車場業 大阪高裁「収益は親が支配」と逆転判決
2022/11/25
子2人が親から使用貸借で土地を借り、営んだ駐車場の収益が、もともと土地を保有する親のものか、それとも子のものかで争われた判決が大阪高裁であった(令和4年7月20日)。大阪高裁は、使用貸借でも使用収益権のある子に所得が帰属するとした地裁判断を覆し、土地所有者である親が享受すべき駐車場収入を無償で子らに処分していると評価でき、親が収益を支配していたとして納税者を敗訴させた。
大まかな事実の概要は、次のとおり(所得の帰属以外の争点に係る事実関係は割愛)。
①約3千㎡もの土地を持つ親から子2人が、平成26年2月、使用貸借契約を締結し、不動産管理会社を通じて駐車場として賃貸した。
②親は、26年2月以降の収益について確定申告書に計上せず提出した。
③税務署は平成29年3月に駐車場の収益の帰属を親とする更正処分等を行った。主な理由は、使用貸借契約自体、真正に成立した契約ではないこと、節税のため親の所有権を残したまま使用収益権を移すという形式が採用されており「特段の事情」があり、当事者の選択した法形式に拘束されず、契約書記載のとおりに有効に成立していると認められないこと、資産から生じる収益は資産の真実の権利者に帰属すること――である。
一審の大阪地裁は、使用貸借契約は真正に成立しているとした上で、この取引が社会通念に照らして異常とはいえないと指摘。そして、この取引を行う目的として所得税・相続税の節税にあったことは認められるものの、このような目的があったことと、使用貸借契約の内容どおりの行為がされたこととは両立し得るというべきと整理。最終的に大阪地裁は、所得税法12条実質所得者課税の原則との関係について、概略「資産の真実の権利者が誰であるかが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する」との所得税基本通達12-1に沿えば、本件は「明らかでない場合に当たらない」と判断、駐車場収入が親にあるということができないとしていた。
これに対し大阪高裁は、まず親子間の土地使用貸借契約の成立を認め、2人の子が本件駐車場から「生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に当たると認定した。
その上で、大阪高裁は「2人の子が単なる名義人であってその収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合」に該当するかをおおむね次のように検討し、納税者の主張を退けている。
A.駐車場収入は土地の使用の対価として受けるべき法定果実であり、所有権者が果実収益権を第三者に付与しない限り、元来所有権者に帰属する
B.すでに所有権に基づき駐車場賃貸事業を営んで賃料収入を取得していた亡き親が子らに本件各土地を使用貸借し、法定果実の収取を承諾してその事業を子らに承継させたことで、本件各土地の所有権の帰属を変えないまま何の対価も得ることなく、そこから生じた法定果実の帰属を子である被控訴人らに移転させたものと評価できる
C.本件各取引は、被相続人の相続にかかる相続税対策を主たる目的として被相続人の存命中は本件各土地の所有権はあくまでも被相続人が保有することを前提に、本件各土地による被相続人の所得を子である被控訴人らに形式上分散する目的で同人らに対して本件各使用貸借契約に基づく法定果実収取権を付与したものに過ぎない